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家族の希望にどこまで添うべきか
発表者 昨日に続きまして神経芽細胞腫の11歳の少女の、今回は小児癌と家族への対応ということですが、皆さんに考えていただきたいのは、積極的治療法でずっと頑張ってきていざこれで余命は1ヵ月ですとか3ヵ月ですとか言われますと、ご家族のほうも愕然として、それではなんとか家へ連れて帰りたい、でもその時には症状が悪化してしまってその希望を叶えることが現実的には無理になってしまったというような感じてした。
後日談も交えて報告します。この患者さんは非常に悲惨な状態で亡くなるのを、周りの小児癌の家族が、特に母親たちがしっかり見てしまいまして、その結果、医療者が家族に何をしてあげるかというより、家族同士の連携というのですか、特に小児科の場合は母親同士の情報交換がすさまじいのを私は目の当たりに拝見いたしました。昨日も言いましたが、子供のホスピスケアのある聖路加国際病院に入院して亡くなった方の情報が逐一この家族へ伝わった。モルヒネは600mgまで使ったからそれまでは大丈夫と聞いて、母親から医師に働きかけがあって、痛いからもっと増やして、ください、今日は何百ミリまで使ったとか母親はノートにしっかりつけてある。
医療者がそれに追いかけられた、特に小児科の先生は本当に追いかけ回されたという感じてした。点滴の量も聖路加では最後はこれぐらいに減らしてきたからうちは多いんじゃないかとか。
家族が非常に学習して医師に働きかけていた、そうすると医者のほうはそんな家族の動きを何も知らないままに押しまくられ飢うるさい家族だというような意識の医師がまだまだうちの病院にはいると思うのですが、こんな形で進んでいっても家族の教育というか家族の働きかけはいいものか、特に武田先生にうかがってみたいと思いまして。
武田 お母さんはたいへんよく勉強するのではないかと思います。私はそれが医療の消費者として当然の態度なのではないかと思います。いままでその態度がなさすぎておまかせだったのは、やっぱり私たち医療者を慢心させていたもとになっていたのではないかと思います。
癌の緩和ケアについて、厚生省は一般の人たちを対象に知識を普及したいといっておりますし、あと一年ぐらいのあいだにさらに情報は拡散してきて、勉強しないお医者さんは苦境に立つという場面が表出して、全体の日本のレベルが上がっていくというように思います。
−家族の情報というのは、医学に裏打ちされた情報も確かにありますが、逆のことも結構あるのです。すべてそれを受けていいかどうかというところは非常に難しいところだと思うのです。
私の患者さんは白血病で22歳の女性でしたけれども、抗癌剤はよくないということで、民間療法をしたいと途中で家族が退院させていきました。その後、再発の激痛のために緊急で入院になったのにそれでも化学療法は拒否する。
ですから、情報を私たちはどのように家族と共有し、それを患者さんの治療に役立てるかというのは、どこまで受けてどこまで説得するかということを考えないといけないような気がします。
紅林みつ子 私も以前は小児病棟におりまして、その医長は白血病の専門家でしたから常に白血病の患者さんばかりで、まだ試験段階の薬が新聞に載るとその新聞を持って、先生この薬いつから使ってくれますかと、それも入院している患者の親同士何人かが集まって来られるのです、母親の熱心さというものを感じさせられました。家族が必死だと看護婦がその中に入り込めない、私たちがするほうが早いのに家族と一緒にすると時間がかかると思う半面、それが本来だと思いながら、やはり施設の中では平等にしなければいけないというところでなかなか難しかったことなど覚えています。
家族にアプローチするときにこういうようにしたらいいですよといったご意見がありましたらうかがいたいのですが。
忘れてはならない家族へのカウンセリング
Wendy 今のお話にあったような家族の苦しみというか悲しみは、いろんなところで典型的にある構図だと思います。
私どもの経験というのは、前にした経験によって色づけられてしまいます。このケースの場合には、他の子供が悲惨な死に方をしたのを見た、その経験によって色づけられ、そういう対応がなされたのではないかと思います。
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